俺は、「仮面ライダー」が好きで、アクションの業界に入った。そして日本の一線で働くアクション俳優の諸先輩達にお世話になる。一緒に稽古や仕事をしていく上で、先輩達は仮面ライダーなどの着ぐるみに入っているだけではなく、時代劇や有名歌手の舞台俳優もこなしていたから、ライダーのアクションに、特別な感情を持っていなかった様に思う。むしろ
「あいつの演技はどうだ」
「あいつの見栄がきれい」
とか、演技の部分での話し合いや、いい意味でのライバル意識のぶつかりあいを見た。それを知るにつれ、
「ライダーのアクションはそれが発祥じゃなくて、基礎になる何かがあるんだ」
と肌で感じるようになり、そしてある写真を大野剣友会の事務所で見つける。それは1970年に剣友会が行った自主舞台「蟻部隊」だった。
「え!剣友会が、舞台演劇をやっていたんだ!!」
その写真には、ライダーの演技、アクション演出をした高橋一俊氏、岡田勝師匠、ライダーを演じた中村文弥氏、V3のツバサ大僧正(注1)を演じた富士乃幸夫氏がいた。
「大野剣友会って芝居の集団でもあるんだ!!」
当時、これは一つの驚きだった。ヒーローのアクションとはそれ単一のものではなく、演技の基礎が底辺にあることを16歳の俺は悟った。そして其の業界に身を置くと、様々なことがわかった。戦隊の並んだポーズは歌舞伎の“白波五人男”から来ているとか、ライダー2号の変身ポーズは2刀流の構えとか。
さらに、千葉真一氏もアクション俳優と呼ばれるのにさえ抵抗して
「アクションは演技の一部なのだ」
とさかんに言っていた。決定的だったのは、1989年、東映大時代劇映画 “激突” (注2)が封切られ、千葉氏とダブル主演の緒形拳が記者会見で
「アクション俳優の緒形拳です!」
と、ちゃかした様に言うと、記者団がウケたのを見て、
「世間は、アクションを下に見ているんだなあ」
と思って、とても悔しかった。
「なんで、血と汗を流してアクションをやっている俳優が下に見られるんだ!ふざけんじゃねえ!!」(炎上!!)
とアクションを生業にしている全員がそう思っていた。そんな反骨精神が、面の下で演じる俺達のプライドになって、頑張れたんだと思う。そんな俺達だったから、面をつけても台詞はきちっと覚えるし、面には表情がないから、感情を体で表現するにはどうすればいいのかと、いつも考えていた。そして、ある日、近くの神社で能面芝居を見た。其の時、
「あっ!!」
と、思った。それは・・・・
( To be continued)
No pain, no gain!
(注1) 仮面ライダーV3に出てくる悪の幹部。大野剣友会の富士乃氏が演じ、監督の内田一作に絶賛されたという。大野剣友会が悪の幹部を演じきれたのも、俳優であるということの証明であった。また中屋敷先輩が大河ドラマに役付きで出演して、アクション業界では、どうやって出れたんだろうと話題になった。
(注2) 千葉真一氏がハリウッドからスタントコーディネーターを連れてきて、ファイヤースタントをコーディネートしたのも話題になった。長門裕之氏が馬の上で火達磨になるのだが、スタントは元JACの卯木浩二氏が演じた。卯木氏は戦隊ダイナマンのダイナブルーの素面と中の両方を演じている。
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